《MUMEI》

「光は、先生たちに名前で呼ばれてるんだね。」

明日の事が無事に決まり、ほっとした帰り道。
私と百花、光の3人は並んで夕暮れの畦道を歩いていた。

さっき、名波先生が光のことを『光』と呼んだことが、なんだか気掛かりで思わず口に出してしまった。

百花がちらりと光を見た。光は頭をぽりぽりとかいた。

「もしかして、奏も名波先生に惹かれてる?」

百花がいきなりそんなことを言い出すから、私は冷や汗が出てくる。奏も?ってどういうことだろう。

うんと言うべきか?
ううんと言うべきか?

迷っていると、光が笑顔で「そういえば、さっきも真っ赤だったよ。先生と話してる時。」

なんでだろう・・・。
ものすごく、穏やかな雰囲気だった。


「私たち二人とも、もう先生のことは諦めてるんだ。すごく好きだったけど。」
百花は遠い目て言った。

「ラブじゃなくて、リスペクトって感じ?だってあの人すごいじゃん。大人で守ってくれるけど、子供みたいに素直でさ。」

そっか・・・。私は二人の表情を交互に見た。

光が名前で呼ばれてる理由は、一年の途中で母親が再婚し、苗字が変わったからだそうだ。
なかなか新しい苗字や、環境が受け入れられずに、心が荒んでいたらしい。

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