《MUMEI》
*譜面*
大きく息を吸い込み、瑠果は譜面を広げた。

「それが楽譜ですか?」

「ああ。少し譜読みをしないとな。直ぐには弾けんのだ」

瑠果は暫く譜面と睨み合っていたが、ふと祭壇の十字架を振り返った。

「新しく変えたのか?」

その問いに、奏楽者が答える。

「はい。ほんの数日前に」

「そうか」

頷くと、瑠果は再び譜面に向かう。

紫堂は傍らからその譜面を覗いてみたのだが、五線の上に並ぶ音符は、複雑な暗号のようにしか見えなかった。

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