《MUMEI》
*婚約*
「しっ、紫堂‥放せ」

「あ、すみません‥」

紫堂は慌てて瑠果の両手を握っていた自分の手を引っ込めた。

「驚かせてしまいましたね‥」

「わ、私は‥ただ」

「あのー‥」

「「?」」

「お2人は将来ご結婚なさるんですか?」

「!?」

驚いたのは、瑠果だった。

「な、何を」

「すみません、教会へいらっしゃる理由が、他にもあるのかと‥」

「それは違‥」

「いません」

「!!?」

紫堂の発言に、瑠果は心底驚いた。

「紫堂、おま、何を」

「これがあの時の契約です」

「!?」

「それではやはり──」

奏楽者の呟きに、ええ、と紫堂は答えた。

「僕と瑠果お嬢様は婚約しているので」

だが放心状態の瑠果には、もはや何も聞こえてはいなかった。

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