《MUMEI》

「とりあえず、いい大学出とこうと思って入っただけだ」


「とりあえずって…」


普通はそんなに簡単に東大には入れない。


入れる孝太は、かなり頭がいいのに…


「もったいない」


「皆、そう言うがな。
つまならい会社に入るより、好きな事してた方が面白いしやりがいはある」


(面白いって…)


そういえば、和馬も『面白そう』という理由で、あっさり転職した。


(この二人…)


面白い事優先という意味では、よく似ていると思った。


「じゃあ、和馬さんと孝太さんが一緒に働くようになったのは」


「「偶然」」


私の質問に、二人は声をそろえた。


「まさか孝太の言ってた『同じ趣味の変な奴』が俊彦とは思わなかったし」


「こっちも和馬が敵視してる『田舎から出てきた生意気なホスト』が俊彦とは思わなかった。
いつも『アゲハ』って言ってたし」


「そっちは名前も言わなかっただろ?」


「『男の名前は興味無い』って言ったのは?」


「…俺」


「…あの〜、すみません」

「「何?」」


盛り上がる二人に、私は質問した。


「で、私が嫌がらせされた理由は?」


あまり過去には関係無い気がした。

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