《MUMEI》
嫌がらせの理由
「つまり、俺も孝太も今の仕事気に入ってるわけ」


(それは、わかった)


和馬の言葉に私は頷いた。

「商店街の連中も、面白くて、好きなんだよね」


「そう」


私は気のない返事をした。

商店街の人達は、皆いい人達だから、気に入ってもおかしくないが…


「それが何?」


私に嫌がらせのような事をする理由と関係あるとは思えなかった。


「昨夜みたいなのは、傷付くんだよね」


『昨夜みたいなの』


私は首を傾げた。


「な〜んか、皆隠してるよね、俺達に」


「…お前絡みで」


私はギクリとした。


「蝶子ちゃんが俊彦と雅彦と幼馴染みなのは知ってるけど、何か変だし」


「昔は、仲が良かったんだろう?…咲子さんが言ってた」


「別に…大した理由じゃないわよ」


「じゃあ、教えて」


和馬が言った。


「俺達も、昔の話をした」

(勝手に話したくせに)


孝太は


「だから話せ」


と続けた。


「話してくれなかったら…」


「とりあえず、女将の前で抱き締めてやろうか?」


「それは困る!」


そんな事されたら、この店から無事に出られなくなりそうだ。


(仕方ないな)

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