《MUMEI》

私は男に足を触られ、舐められ悲鳴を上げた。


幸い、そのアパートの壁は薄くて。


すぐに隣の住人が私の悲鳴に気付いて大家さんと一緒に男の部屋に踏み込んだ。

そして、警察に保護された私を…


『大丈夫か、蝶子!』


『俊兄…』


迎えに来たのは俊彦だった。


ストーカーは私の父が出張でいない事も


『ごめんな。遅くなって』

『ううん』


生徒会役員の俊彦が、卒業式の準備で帰りが遅い事も知った上で


私を襲ったのだった。


『…帰ろう。送ってくよ』

『うん』


私は、俊彦の手を取った。




「ちょっと待った」


「何?」


話の途中で和馬が口を挟んだ。


「俊兄って、俊彦だよな?」

私は頷いた。


「何か…キャラ違わないか?」


確かに、この頃の俊彦は、落ち着きがあり、私に対する態度も、妹を可愛がる兄のようだった。


決して


むやみに抱きつこうとしたり


『蝶子ちゃ〜ん』などと、甘えた声は出さなかった。

「私が思いきり殴ったから、頭のネジでも飛んだんじゃない?」


「殴った? 何で?」


「これから話す」


私は、続きを話し始めた。

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