《MUMEI》
裕斗視点
「財布も持たないでどこまで行って行ってたんだよ!心配してたん…、真菜?」
「あ〜ん!お兄ちゃ〜ん!」
俺とそんなに身長が変わらない真菜。長い腕、大きな手の平でギュ〜ッと抱きついてきた。
「どうしたんだ真菜ちゃん!おい裕斗!お前のせいで真菜ちゃん泣いてるぞ!」
「分かってるよ!さっきはゴメンな真菜!泣かないでくれよ〜!」
「ぢがう゛、ぢがう゛〜〜〜っっ!!」
泣きじゃくる真菜の背中を優しく撫でてあげる。
しゃくりあげながらこんなにも泣くなんて…俺が原因じゃないなら一体何があったんだ?
「私ね?、お兄ちゃんの友達に紹介出来ないくらいへしょい?」
「は?何言ってんだ?」
「だ、だっ゛で!!
ダメ!鼻水出る!」
真菜は俺から離れティッシュを取ると窓に向かって鼻水をチ〜ンと出した。
そしてそれをゴミ箱に捨て、ヘナヘナとテーブルの前にへたり込む。
「…誰かに言われたのか?」
秀幸がそう言うと真菜はコクッと頭で返事をした。
秀幸は真菜の隣にしゃがみ込み、続けた。
「真菜ちゃんはそこらの女の子なんか相手になんね〜ぐれ〜すっげ〜美人ちゃんだ!
誰だ!そんなバカな事言ったのは!!
義理のお兄ちゃんがそんな奴やっつけてやる!」
「誰が義理の兄貴だよ……!ああっ!!……ちょっ!!…って……!秀幸〜つつ!!」
もう胸がいっぱいだ〜〜!!
秀幸だ〜い好き!!
ガバッ!!
「こらゆうちゃん!抱きつくなっ!こらっ!こらっ!」
「だって嬉しいんだもん!秀幸大好き〜っ!」
「あ〜んお兄ちゃんのバカあ〜!!」
「こら!真菜ちゃんが!!」
秀幸が無理矢理俺を剥がそうとするが俺はくっついていたくて必死にしがみついていると…
ピンポ〜ン!!
「ほら!誰か来た、離れろ」
「……くそ、続きあるからな」
俺は渋々秀幸から離れ玄関に向かう。
真菜はおえつを漏らしながら泣き止まないでいる。
ガチャ!
「は〜い!」
「あの、さ、坂井さんっ!こ、今晩は!初めまして!」
――眼の前に見知らぬ男…つかめっちゃ格好イイ。
「初めまして…、あの、貴方は?」
「内藤逸樹です!、あの、さか…、いえ、あれ?名字なんだっけ…」
「あの人〜!」
「へ?」
「酷い事言った奴!」
「本当か?真菜ちゃん!!」
後ろでそんな二人のやりとりが聞こえる。
「…内藤君って言ったね?」
俺がそう言うと内藤は生唾を飲み込み、一歩後退りした。
前へ
|次へ
作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ
携帯小説の
(C)無銘文庫