《MUMEI》

ローテーブルの煙草に手を伸ばす、薄暗い部屋には淡い冷房の音だけが聞こえていた。

「‥‥疲れてるの?」

「や、平気」

ぱち、と彼女が部屋の電気を付けた。机に散乱したチューハイの空き缶、食べかけのつまみ、煙草の灰皿、携帯電話、いつもと代わり映えしない俺の部屋だ。ただでさえ色気のない空間がさらに色気のない蛍光灯の光に照らしだされる、俺の隣に腰かける恋人の横顔さえくすんで見えた。

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