《MUMEI》

カオリちゃんは備え付けの冷蔵庫を開け、アイスティーをグラスについだ。



『女性という生き物は、セックスによって失われた水分を補うために喉を潤す――……』

         ― 磯野カツオ ―



僕は学述的であり、アメリカンジョークのようでもある格言を心の中で唱えた。


すると――…


―――クン…クン…


口にする前に、臭いを嗅ぐ癖だろうか…?


彼女はグラスに顔を近づけ、茶葉の薫りを確かめるような仕草を見せた。


僕はその様子を見て、あることを思い出した。

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