《MUMEI》

「はい、質問」


私の話を聞き終わった和馬が、手を挙げた。


「何?」


「何で俺と孝太には、写真の事まで話したわけ?」


「…さぁ」


正直、自分でもよくわからない。


ただ、何となく、心の中に溜め込んでいた想いを吐き出したかったのかもしれない。


兄が変態だとは、弟の雅彦には言いづらいし。


商店街の皆や父に真実を話せば、今以上に心配をかけてしまうから、言えなかった。


「さぁって…」


「あえて言うなら、地元出身じゃないし、付き合いが浅いからかな?」


二人は、言いふらすようなタイプにも見えなかった。

「ふぅん。まぁ、いいか。三人だけの秘密っていうのも何だかいいよね」


「俊彦入れたら四人だけど」


「まぁ、そこは無しで」


和馬は笑った。


「…そろそろ出るか」


孝太が時計を見た。


「うん」


「お帰りですか?孝太さん」


(わ!びっくりした)


孝太がふすまを開けると、女将の姿があった。


「会計を頼む」


「はい」


孝太はお札を女将の手に直接乗せた。


「少々お待ち下さい」


(いつからいたんだろう、あの人)


「時々様子を伺ってたみたいだな」

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