《MUMEI》
*原因*
「‥!?」

紫堂は触れているその手のあまりの熱さに思わず自分の手を引っ込めかけたが、瑠花の手はそれを許さなかった。

「お嬢‥さ、ま‥?」

紫堂に問い掛けられた瑠花は、悟られまいと俯いたまま言った。

「私がやる」

「ぇ‥」

「元はと言えば‥私が原因なのだからな」

だが紫堂は、いいえ、と首を振った。

「離れていて下さい。濡れてしまいますから」

「‥‥命令、か?」

「はい」

「分かった‥」

瑠花は手を放すと、大人しく従った。

「‥‥‥‥‥‥」

紫堂はテーブルの始末を終え、今度は床を拭き始めた。

テーブルの下にも、零れた紅茶が広がっている。

「‥!?」

ガン、と鈍い音がし、瑠花は駆け寄ってテーブルの下を覗き込む。

「大丈夫か‥?」

すると紫堂は小さく呻いたが、すぐに這い出して来ると、頭を押さえながら苦笑した。

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