《MUMEI》 環ノ訪問――ピリリリリリッ 荷造りをしている最中だった。 「ハイっ!もしもし!?」 『あ……夏坂です』 「ハイ…お久しぶりです」 『今――…何をなさってますか?』 「今ですか?」 ――そういえば環さんには引っ越しのことまだ話してなかったな。 「環さんは仕事ですか?もしよかったら…会えませんか」 忙しいので外で会うのはためらわれた。 でも家に呼ぶのもどうかと思う。 ――…汚いし。 『あの……どこで会いますか?』 「実は忙しくてまだ話せてなかったんですけど、引っ越しをすることになったんです。それで―…今荷造りの途中で」 『あ、私、手伝いたいです!!』 「あ…っそんな!いいですよっ」 『…邪魔ですか?』 少しすねたような声で環さんは言った。 ――可愛いすぎる。 「じゃあ…お願いします。でも少しだけですよ」 『ハイ!』 ――仕事はなかなか進む訳がなく、オレ達は話をした。 仕事の話だけではなく、誰にも言えないタレントの悪口とか、話すことがなくなるまで話した。 「あの、やっぱり気になりますか?オレともうひとりのオレのこと」 「話して……くれるんですか?」 「わかりません…。まだ決めてはいないんです。ただもう少しだけ先延ばしにしようかって話になってます」 「そうなんですか……」 「でも、環さんには知っていて欲しくて…」 「どうしてですか?」 「あなたはオレの中では特別ですから」 ――環はとても嬉しくなった。流理がそんな風に言ってくれるなんて思いもしなかったから。 前へ |次へ |
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