《MUMEI》

私の言葉に、和馬はニヤリと笑った。


「あれ〜、『恋愛初心者』って意味で言ったんだけど。

今、別の事想像したでしょ?

でも、俺『そっち』も自信あるよ」


和馬の言葉に、私は赤くなった。


「初々しいねぇ…。育て甲斐ありそうだなぁ。

ね、…だからさ」


和馬は私の肩を抱き、耳元で囁いた。


「俊彦の事は忘れて、俺と付き合おうよ」


「くすぐったいから、離れてよ」


言葉と一緒に息が耳にかかった。


「何? 感じちゃった?」


フッ


「ひゃ?!」


和馬が息を耳に吹きかけたので、私は思わず悲鳴をあげた。


「敏感でいいね。…嬉しいよ」


ペロッ


「…っ…?!」


私は和馬の行動に驚いて、声が出なかった。


(な…)


今、和馬は


私の耳を…


(なな…)


犬のように、舌を出して


(舐めた?!)


私は慌てて耳を押さえた。

私の耳は、確かに


和馬の唾液で濡れていた。

「もう、離れてよ!」


「はいはい。今日は味見だけにしとくよ」


和馬は悪びれた様子もなく、笑顔で私にウインクした。


「今日も明日も明後日も、これ以上はありえないから!」

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