《MUMEI》
*手当*
「い、いえ、少し驚いただけですから」

紫堂は作り笑いでごまかした。

すると、

「そうか。何やらいつもと様子が違うような気がしてな」

瑠果は紫堂の動揺には気付かずに、再び食事に戻る。

暫くして、いつものように紫堂が拙い手つきでナイフを手にリンゴの皮を剥き始めた。

「!」

突然右手の指先に痛みが走り、紫堂は手にしていたリンゴを落とした。

「紫堂‥!?」

傷口から血が流れ出すのを見て、瑠果はポケットから白いハンカチを出し、巻き付けてやった。

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