《MUMEI》
買い物
車の和馬は駐車場へ、自転車の私は駐輪場へそれぞれ向かった。


和馬はその日はもう私に絡んでこなかった。


(あ、メール来てる)


私は自転車の前で携帯を開いた。


メール着信は、一件だけで、咲子さんからだった。


『帰りに白石で、鶏肉買って来てね。

明日の弁当、俊君がチキンピラフ・雅君が鶏の唐揚げ・和馬君がチキンのトマト煮・孝太君が鯛の粕漬けになったから』


(孝太は関係無いような…)

私はツッコミを入れつつ、咲子さんに『了解』と返信した。


(雅彦、大丈夫みたいね)


鶏の唐揚げが食べれるのだからと、私は安心した。


私の為に、倒れた雅彦。


本当は、見舞いに行くべきだろうが…


俊彦もいると思うと、行けなかった。


私は、自転車に乗り、『白石肉屋』を目指した。


途中で


春樹さんがいる『フラワーショップ ローザ』と


瞳さんがいる『ナガシマカメラ』の前を通ったので


店の前で会釈をしておいた。


二人はそれぞれ接客中のようだった。


「いらっしゃい、蝶子ちゃん」


「こんにちは、圭介さん」

店にいたのは、祐介さんの兄の圭介さんと


「あの、…奥さん、ですか?」

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