《MUMEI》

私は、屋根のある階段部分に腰を下ろした。
ハンカチで気休めに頭や腕などを拭いてみる。


・・・見覚えのある車が、目の前に止まった。
運転席側のドアが勢いよく開き、中から見慣れた姿が出てきた。

「せんせい・・・」

「おまえ・・・なんでいんの。」

心細かったのかな。少し声が震えた。名波先生は哀れそうに私を見つめる。

「こんな天気じゃ、星、見れないですよね?」
「当たり前。」

そう言って先生は私の頭を撫でた。

「びしょ濡れじゃないかよ。ばか。」



ーーーいきなり閃光のような一瞬の光と、ドンというよりかは、バリバリという何かを引き裂くような音が響き渡る。

「キャー!」

私は無意識に、先生の胸の中に飛び込んでいた・・・。

「近くに落ちたかな。」
先生は冷静に辺りを見渡す。私は恐くて顔をあげられずにいた。

また同じように光と音が同時にやってきて、私は先生の胸に深く顔をうずめていた。

「雷恐い?」

そんなに恐くない人だって、こんなに近くで鳴っていて、しかも外にいたら、恐いと思う。

私はそのままの態勢で、首を横に振った。

「おまえは強がりだな。」

・・・そう言って、先生は胸の中にいる私の背中に腕を回し、強く抱きしめた。

すっぽり収まっている感じが、なんだか心地良かった。

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