《MUMEI》
*安心*
「はい。──ありがとうございます」

紫堂が言うと、瑠果は安心したらしく微笑んだ。

そして床に転がっているリンゴを拾い上げると、それを窓から放り投げた。

「!?──お、お嬢様っ」

あまりに突拍子のない瑠果の行動に、紫堂はうろたえる。

すると瑠果はニッコリと笑って言った。

「これでもう安心だろう?」

「ぇ」

「これでお前はリンゴの皮を剥かずに済むではないか」

「お嬢‥様」

「そうだろう?」

まだ事態がよく飲み込めない紫堂に、瑠果はもう一度微笑んでみせた。

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