《MUMEI》

「自分で言っといて何びっくりしてんだよ」

あまりにすっとんきょうな声をあげたのでツッコミを入れると、慌てて両手で口を塞ぐ。おせぇよ。

「や、だってだって」
「キューティーハニーか」

気取られたことが悔しくて無理目に明るい顔を向けるが、それと反比例してひどく心配そうな顔を向けられる。

「‥‥大丈夫なん?」
「何が」

手早く着替えおえて壁にかかる時計を見上げるが、まだ仕事開始まで5分もあった。早くここから出ていきたい、ち、と思わず舌打ちが零れる。そういう意味じゃないのに、目の前で半裸のまま固まるバイト仲間の目に怯えが見えて、ますます苛立った。

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