《MUMEI》
*歩調*
どこへ行くとも知れず、2人は歩いていた。

「‥‥‥‥‥‥‥」

「‥‥‥‥‥‥‥」

手を繋いで、歩調を合わせて。

ただそれだけで良かった。

特別な会話がなくても、見つけたのが小さな花だとしても。

隣りにいるその温もりを感じてさえいられれば、それで良かった。

「‥‥‥‥‥」

「紫堂」

立ち止まった瑠果が、紫堂を見上げた。

少しの間をおき、紫堂は答える。

すると。

「普通に話していいぞ?」

その言葉に動揺する紫堂。

「え、ですが──」

「人目は無い。それに──‥その口調は疲れるだろう?」

「い、いえ、そういう訳では‥」

否定する紫堂。

瑠果は、そうか、とだけ答えて、紫堂の手を引いた。

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