《MUMEI》
―恋の病<違和感
なんだか、よく分からないまま着いた場所は、どうやら普通の教室のようだ。


「迅、なんだよ、こんなとこまで連れて来て…。」

「…斬雨…俺…彩女ちゃんに…、彩女ちゃんに…、嫌われてるかもしれない!」

「はぁ!?たかがそんなことでいちいち2階から5階までダッシュしたのかよ!?」

「た、たかがとか言うな!ここはサボり&ラブラブスポットだぞー!」

「…初めて聞いたし。てかここ、今は使ってない教室じゃん。」

「だから、人が来ないからサボり&ラブラ…」
「あっそ。」


言い終わる前に言ってやった。


「斬雨ー!お前なんか冷たいぞっ!親友の相談なのにー…。」


迅には、相変わらず呆れてしまう…。


「迅、彩女って子と話したの?」

「…いや、話しては、ない、けど。」


迅は語尾を濁した。
というより、話してないなら嫌われてるかなんて分からないと思う。


「話してないのに嫌われるとか、お前何したんだよ…?」

「つか、何も…。確かに見てたりはしてたけどー。俺、なんか、避けられてる…てか、睨まれてる!」

「じゃあ、それで軽蔑されたとか?」

我ながら酷いことを言ってしまった。
迅の顔がムンクの叫びみたいになった。


「そ、そんなぁー!それはあんまりだぁ!俺、彩女ちゃんに話しかけてみる!」


迅は廊下を50M走みたいに駆けて行った。


「はーい、行ってらっしゃい。」


恐らく迅には聞こえないであろう返答をしながら、僕は自分の教室へと歩いていった。
さっきのこともあり、実は迅のことより数倍気になっていた。


―元通りになってればいいけど…。


足早に歩けば、意外と早く教室にたどり着いた。


カラカラ…と、弱々しく扉を横に開けば、僕は皆の注目の的になった。


やばい、と、反射的に思ったが、一瞬で僕の予想は外れ、いつものざわつきや会話に戻った。


「斬ー雨!お帰り。」


瀬恋がいつも通りに話し掛けてきた。
瀬恋と会話する前に、僕は教室を見回し、蓮の姿を探した。

いつも通りの教室に、少しの違和感。
皆居るし、会話もしているし、笑い合っていて…。


「斬雨…?」

「…転入生、は?」


喉が張り付いたみたいに、声が掠れた。


「ん?蓮君なら、そこにいるじゃん。」

「そこ…?…!?」


瀬恋の言うそこには、皆の中心で話しをしている蓮の姿があった。
僕は目を疑った。

―楽しそうだ。

さっきまで険悪だった教室は、転入生を迎え入れて、とても明るくなっていた。

―おかしい、さっきまでは…。仲良くなれたにしても、さっきの状態からここまで仲良くなれるだろうか。

気持ち悪いまでの、違和感がした。
まるで、蓮という人物は、元からいたかのように感じてしまった。


人が、機械人形になった。規則的に、プログラムにそって、自らの意思を忘れたかのように見えた。


―気持ち悪い。
近寄りたくない。
話し掛けられたくない。
皆狂っている。


心に反し、体は向かっていった。


行くな、行きたくない、行けない!
僕も狂ってしまう!

気付けば、蓮達の輪の前に立っている自分がいた。


「蓮、くん。ちょっ、と、話しが…いい、かな?」


僕もまた、おかしい。

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