《MUMEI》 マンションに着くと、佐久間が私を部屋までおぶってくれた。 「鍵貸して、ドア開けるから。」 そして部屋の中に入り、佐久間は私をゆっくりとベッドの上に下ろす。 「愛加ちゃん、やっぱり体が熱いよ。熱測ってみようか?体温計はどこ?」 私が指差した場所から佐久間は体温計を取り出して、私の脇の間に入れる。 「きっと風邪だよ。…風邪薬とかあるの?」 私は風邪なんて10年近く引いてないので薬を買い置きしていなかった。 「薬は買わないの…私、超健康体だから」 「じゃぁ、今回は異常事態だね……」 異常事態か・・・ 佐久間はニコニコしながら私にそっと布団をかける。 「すぐ良くなるよ」 佐久間は心配そうに私を見ながらも励ましてくれる。 その笑顔を見ると、なんだか安心した。 「無理しちゃダメだよ」 佐久間にはそう言われたが無理なんかしていなかった… ただ、太一の話を聞いてから急激に体調が悪くなっただけだ… それ以外に思い当たることがなかった。 前へ |次へ |
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