《MUMEI》 自己紹介をするねさて、自己紹介をするね。 わたしたちの紹介。 普通はそこから始めるだろうって? まあ、いいじゃない。そんなの。 わたしの名前は、別宮理図。 あなた、つまり双子の姉の名は、別宮里沙。 ちなみにお母さんの名は沙羅。 お父さんは、いない。 放浪の旅をしているらしいが、本当はどうなんだか。 籍はどうやら入ったままのようなので、離婚はしてないようだ。 とにかくわたしも、あなたもわたしたちのお父さんのことは知らない。 わたしは16才になった。 高校生だ。 あまりちゃんと学校へ通ってるわけじゃあないけれど。 わたしとあなたは、幼い日には一つの存在だった。 世界がわたしたちを引き裂くまでは。 じゃあ、そのときの話しからはじめるよ。 わたしたちは、幼い日いつも公園で遊んでいた。 風の音を聞き、流れる雲をみて。空を渡っていく太陽と、日々色を変えてゆくそらと木々をみて。 その日もわたしたちは、沈みゆく太陽を眺めていた。 西のそらは金色に燃え上がり、天の高みは深く濃い青に沈んでいく。 わたしたちは、その自然が奏でる色のシンフォニーを見ていた。 はずだ。 はずだった。 でも、わたしは気がついてしまう。 あなたが、沈みゆく太陽を見ていないことを。 あなたの瞳には何も映っていないようだ。 あなたの全身は、硬直している。 そう、まるで。 まるで何かが。 無理矢理あなたの中へ押し入ろうとしているの、じっとこらえているようだ。 でも、わたしには判った。 あなたは、世界を見ていたのだ。 残酷で恐ろしい。 邪悪で傲慢な世界そのものを、見ていた。 世界は、あなたを選んだ。 それは、わたしには堪え難いことだった。 わたしは、生まれてはじめて孤独とはなにかを知る。 しばらくして、気を失ったあなたと号泣しているわたしたちは大人に見つけられ、病院へ運ばれることになる。 前へ |次へ |
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