《MUMEI》

どれくらいそうしていただろう。膝を抱えて暗闇の中目を閉じていると、不意に雨が上がった気がした。
もう雨がやんだのかと思ったが、ざぁざぁと水滴が屋根やアスファルトを叩く音は聞こえる。

「英田」

それにまじって聞こえる、聞いたことのある声。
顔をあげると、ビニール傘をかざした茶髪男が目の前でしゃがみこんでいた。

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