《MUMEI》

俯いて鼻を啜る友達が何だかかわいそうになってきて、俺はソファから降りる。煙草の灰を拭くのとオナニーくらいにしか使わないティッシュの箱を片手に、ひょこひょこと失恋男に近寄る。

「英田」
「‥‥っう‥‥、」

本格的に泣いてるし、何だか俺ももらい泣きしそうだ。

「ごめ、ん、な」

あ、やべぇ泣く。

本気で俺まで泣き出しそうになって、それをごまかすように俺は膝立ちで失恋男の頭を抱き寄せた。よくお袋とかしてくれたな、思い出しながら、まだ濡れた失恋男の髪をそっと撫でる。
来ているシャツが濡れている、鼻水とか付かないといいな、一瞬回した腕をほどきかけるけど、子供みたいに泣く失恋男への同情のほうが勝って、結局膝立ちのまま頭を胸に抱く。

今度またコンパでもひらいてあげようと思った。

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