《MUMEI》

妻のうっとおしさに侮然としながらも、僕は釈明の言葉を探す―――……。


「そうかい?――…きっと一緒に仕事していたインド人技師の香水の匂いさ……。」


僕は、妻が勘繰る移り香を外国人のせいにして、適当にお茶を濁した。


僕の会社には、中近東から来ているエンジニアが大勢いる。


彼等はやたらキツイ香水を好んで使うので、この場の理由付けには丁度よい。



「あら、そうなの――……。」


妻は釈然としない様子だったが、それ以上、移り香の件を追求してくることは無かった。

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