《MUMEI》
悪夢
佐久間が買ってきてくれた薬を飲んで私は寝ることにした。


「心配だから今晩は泊るね。隣で寝てるから何かあれば起こして!」


佐久間にそう言われ、あっという間に寝入った。





私は眠りながらも、高熱で体が思うように動かないのを感じていた。


手が・・・脚が・・・
重い。。。


そのせいか変な夢を見た。





太一が目の前に立っている。
大学生の頃の姿で。


「愛加・・・」


「やだっ!急に真顔になって。何?」


何?って言うのと同時に太一に抱きしめられた。


「俺、もう見てられないよ!」


「なんなの急に!?」


「愛加にはいつも笑っていてもらいたい!」


あ、これは、あの時の・・・


「俺、初めて会った時から・・・愛加のこと・・・」


太一に告白された時・・・


「俺じゃダメ?俺は愛加のことを理解してるし、幸せにする自信がある!」


「いいよ・・・」


私はその言葉が本当に嬉しかったくせに、素っ気なくそれしか言わなかった。


「じゃぁ、手をつないで行こうよ!」


「ごめん太一。なんだか手が動かないの・・・。脚も重くて・・・。それにどこに行くのよ?」


「どこって津田沼だよ!」


津田沼!?


「なんでそんなところに!?」


「美幸から聞いただろ?俺の彼女が津田沼にいるって」


これは悪夢だ。
高熱が私に悪夢を見せている。


そして夢の中の太一が続ける。


「愛加だって佐久間さんといい感じなんだろ?」


『いい感じ』ってやめて!?


「俺は彼女と幸せにやってるよ。愛加も幸せでやれよ!」


夢だと分かっているのに、私は夢の中で叫ぶ。


「さっき私を幸せにするって言ったじゃない!」


「お前の我儘には疲れたよ。お前が他の女を探せって言ったんだぜ」


本物の太一はこんなんじゃない!


「太一を返して!」


「うぜえこと言ってんじゃねぇよ!」


そう言って夢の中の太一は私の知らない女と電車に乗る。


「待って!」


一生懸命に追いかけようとするが、脚が動かない。


夢だと分かってる。
でもお願い!
太一を追いかけたいの!


「愛加ちゃん!」


え?


「愛加ちゃん!」

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