《MUMEI》 報告「ただいま戻りました」 「おかえりなさい」 咲子さんは、ベランダに干してあった洗濯物を取り込んでいた。 「手伝いますね」 私はリビングにバックを置いて、ベランダに出た。 「ありがとう。…デートどうだった?」 「デートじゃないです。途中で和馬さんも来たし」 「あら〜、続き、聞かせてくれる?」 苦笑する私に、咲子さんは興味津々な様子だった。 「はぁ…。とりあえず、これ、たたんでからにしませんか?」 私の提案に、咲子さんは頷いた。 それから、私はたたんだ洗濯物とバックを置きに一旦自室に戻った。 再びリビングに戻ると、咲子さんがテーブルにお茶とお饅頭を用意していた。 「昨日、勇君からもらったの」 お茶は、香ばしい香りがする蕎麦茶で、お饅頭も生地に蕎麦粉を練りこんだ蕎麦饅頭だった。 ちなみに、中に入っているこし餡は、薫子さんの『花月堂』から提供されていた。 『花月堂』は、店頭販売は小規模だが、特定の顧客を沢山持っていた。 特に、美味しい餡子が有名で、『ベーカリー 喜多村』にも、餡子を提供していた。 (『クローバー』のケーキにも何か使えないかな…) 前へ |次へ |
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