《MUMEI》 *呼吸*その直後。 「紫堂‥っ」 慌ただしい足音と共に、瑠果が戻って来た。 余程の勢いで走って来たのか、随分と息が荒い。 そんな彼女に、紫堂はただ頭を下げる事しか出来なかった。 「すみません、また‥」 無残になった皿の残骸を見ても、瑠は大して気にも留めない様子でいる。 彼女の心配は別の事にあった。 「怪我は‥無いか‥?」 「ぇ」 瑠果の口から出たその台詞に、紫堂はポカンとした。 すると瑠果はまだ息を荒げたまま 「怪我は無いかと‥聞いている」 と尋ねた。 一呼吸分の間をおいて、紫堂はようやく答えた。 「はい、何とも‥」 「そうか、なら良かった‥」 それを言い終わるとほぼ同時に、瑠果は床にへたりこんだ。 「大丈夫ですか‥?」 「ああ。安心した‥」 瑠果はようやく呼吸を落ち着かせて言った。 前へ |次へ |
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