《MUMEI》
*宝石*
「すみません、ご心配をおかけして──‥」

頭が上がらない紫堂。

今朝から立て続けに起こした失敗は、これで3度目だった。

「‥‥‥‥‥‥」

「紫堂」

瑠果は立ち上がると、紫堂の頬に触れた。

「お前が無事なら私はそれでいい」

だが紫堂は何も答える事が出来ない。

瑠果の眼を見る事が出来ない。

はやり自分は執事に向いていない、そんな考えが頭をよぎる。

「顔を上げてくれ」

必死な声だった。

紫堂は恐る恐る、その少女の碧い眼に視線を向ける。

まっすぐに自分を見つめるそれは、透き通った宝石のようだった。

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