《MUMEI》

「あ、あの?」

「震えてる。」

確かに、雨に濡れた寒さと雷への恐怖で、私は自分でも気付かない程度に震えていた。

「かわいいな。おまえ。」
先生は私の頭に、自分の頬を押し当てた。

・・・いろんなハプニングが合わさり、ドキドキが止まらない。

そんなことして、好きになったら冷たくするの?
そんなのヒドイよ・・・。
先生にとったら、飼っている猫と同じような感覚なのかもしれない。

・・・でも私にとっては違う。抱きしめられた腕の力や、胸を通して聞く声、雨の匂いと混ざってる洗い立てのTシャツの匂い。

そんなことされたら、忘れられないよ。

少し抵抗するように、腕を伸ばして、顔を上げた。
先生からもらった熱で、体はすっかり温まり、寒暖の差で目が潤んだ。

「先生・・・」

「あ、ごめん。やばいな俺・・・」

少し離れた。先生も自分の行動に気付いたのか、少し赤くなっている。

「鍵があるから、とりあえず中に入ろう。」


先生は足早に車へ戻り、車から学校の鍵を持ってきてくれた。

慣れた手つきで、素早く開けた。
すぐさま廊下の奥にある、宿直室に向かい、念のため備えてあったバスタオルを頭からかけられた。

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