《MUMEI》

悲しくて涙が止めどなく流れて電話で泣き続けた。
それを鈴木は黙って泣き止むのを待っている。


涙が少し途切れると気持ちが少しだけ冷静になった。


「好きな人って誰?事情を全部説明して!」


なんでこんなことになったのか知りたい。


そして鈴木がやっと重い口を開く。


「誕生日にみんなで飲みに行ったんだ…そこで誰かが女の子をナンパして…」


ナンパ!?


「その日は連絡先を交換して別れたんだけど…正月に連絡があって…告白されてそれから…」


それから…何よ!?


しかし鈴木は再び黙ってしまった。


「黙るなんて卑怯よ!」


私が言うと、小さく何か聞こえる。
驚いたことに鈴木が泣いているのが電話越しに分かった。

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