《MUMEI》

「絶対、本気じゃないですよ」


私はニヤニヤする咲子さんに、必死で訴えた。


「和馬君は、女の子を褒めるのは得意だけど、簡単に『付き合おう』なんて言う子じゃないわよ。

まぁ、蝶子ちゃんを最初からかなり気にはしてたけどね」


「私を?」


(何で?)


「蝶子ちゃんは俊君の『マーメイドちゃん』だし。

和馬君、俊君の事ライバル視してて、こっちに来たばかりの頃俊君の昔の事かなり知りたがったから、自然と蝶子ちゃんの事も耳に入っただろうし」


『ライバル視』


(もしかして…)


「私に告白したのって…俊彦に対する嫌がらせですかね?」


俊彦が気に入っている私が、和馬の彼女になれば、俊彦は悔しがるだろう。


だとしたら、いい迷惑だ。

私は眉間にしわを寄せた。

「う〜ん。それは無いと思うけど…

で、返事はしたの?」


「断りましたよ、もちろん」


「少し考えても良かったじゃない?」


「だっ…」


言いかけて、私は口をつぐんだ。


「ん? 何?」


「何でもありません」


(言えない)


耳を舐められたなんて。


「気になるじゃない」


「何でも無いですよ!」


私は、慌てた。

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