《MUMEI》
要注意
「蝶子ちゃんって、本当に嘘が下手よね」


「う…」


それは、自分でもわかっていた。


「…で。和馬君と何があったの?」


「だから何も…」


「「カズ君がどうしたの?」」


「うわっ…」


驚いた。


いつの間にか、ランドセルを背負った双子が、並んで私達を見つめていた。


「「ねぇ」」


(何か…怒ってる?)


私は双子の鋭い視線に寒気がした。


それは、昼間女将が私に向けた視線にそっくりだった。


「こら、まずは『ただいま』でしょう?

ランドセルも置いてきてね。

それから、手を洗っておやつ!

はい、動く!」


パンッ


「「は〜い」」


咲子さんが手を鳴らすと、双子は言われた通り、パタパタと部屋に向かった。


「蝶子ちゃん」


咲子さんが急に小声になった。


「はい?」


「双子の前で、和馬君の話は禁止ね。

あの二人、『シューズクラブ』で和馬君に靴を選んでもらって以来、和馬君に夢中なの」


「…はい」


私はゴクリと唾を飲み込んだ。


孝太には女将


和馬には双子


おそらく、他にも…

俊彦や雅彦にもファンがたくさんいるだろうと思った。

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