《MUMEI》
再会
約束した喫茶店に、時間ちょうどに野中さんはやって来た。

顔はなんとなく覚えていたけど、やっぱりきれいな人だ。

先に来ていたオレを見つけると、ゆっくり近付いてきた。

「どうか……した?」

「有理が私より先に来ているなんて初めてだから…」

「そうだっけ?」

「うん」

嬉しそうに野中さんは笑った。

「今日は…大事な話があって連絡したんだ」

「………別れたい…とか?」

やっぱりそれしか考えられないよな。

「……いや、それはオレには決められない」

「え……?どういうこと?」

オレは意味がわからなくて混乱している野中さんに微笑んだ。

「これから時間ある?連れて行きたいところがあるんだけど」

「着いた。降りて」

タクシーから早苗さんを降ろす。場所はマンションの前。

「ここは…?」

「君の会いたい人がいる場所」

「?」

エレベーターは元気な人は使ってはいけないというルールがあるため、階段を使って5階まで上った。

「ただいま」

「おかえり」

奥からオレと同じ声が返ってくる。

「お客さんだよ」

「誰?」

有理はオレの後ろに現れた人を見て、目を見張った。

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