《MUMEI》 コラボレーション穏やかな春の日。 私は『花月堂』を目指して商店街の坂道を下っていた。 (ん?) 丁度、目の前に、私とは反対に坂を上ってくる女性が見えた。 私と女性の目的地は同じだった。 「こんにちは」 「こんにちは。蝶子も餡子をもらいに来たの?」 『花月堂』の入口で、私に質問してきたのは 『ベーカリー 喜多村』の店長の香澄(かすみ)さんだった。 香澄さんは、四年前に結婚したそうで、今は旦那さんと一緒に『ベーカリー 喜多村』を経営していた。 「いえ、今日は…」 「いらっしゃい、二人とも」 言いかけた私に、『花月堂』の中から薫子さんが声をかけた。 薫子さんは、春らしい桜色の着物を身につけていた。 「こんにちは、薫子。急にごめんね。 今日はあんぱんがよく売れちゃって」 「いえ、大丈夫ですよ」 薫子さんはつぶあんが入ったビニール袋を香澄さんに手渡した。 「ありがと! またお願いね。蝶子もまたね!」 香澄さんは足早に『花月堂』を後にした。 「蝶子はこれよね」 「あ、はい」 私は薫子さんから使い捨て容器に入った 桜の花の塩漬けを受け取った。 前へ |次へ |
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