《MUMEI》 「前回、好評でしたよ。やっぱりここの餡子のおかげです」 実は、『花月堂』から『シューズクラブ』へ持っていくケーキの材料をもらうのは、これが二回目だった。 ちなみに前回は、フワフワの生地に餡子とバタークリームを和えた物をサンドしたあんばたブッセだった。 「俊彦達がちゃんとうちの餡子だって宣伝してくれてるみたいで、うちに来る若い女の子達も増えたのよ。 一番は、言い始めた蝶子のおかげ」 「いえ、…そんな」 花のように微笑む薫子さんは、とても可愛くて、私は照れてしまった。 「で、これはどう使うの?」 「あ、シンプルに、蒸しぱんの上に飾ろうと思います」 白い蒸しぱんに、この淡い色合いははえるだろうと思った。 それに、この絶妙な塩加減がいいアクセントにもなりそうだった。 (最近は、塩味のお菓子流行ってるし…) 「できたら、またお裾分けしますね」 「楽しみにしてるわ」 薫子さんはまた花のように微笑んだ。 (えっと、それから…) 私はショーケースを眺めた。 「みたらし団子五つ下さい」 「自宅用?」 (居候だけど…) 薫子さんの言葉に、私は頷いた。 前へ |次へ |
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