《MUMEI》
見舞い
私は『花月堂』を後にした。


荷物が軽いので、久しぶりに私は徒歩で家路に着いた。


桜の花の塩漬けを『クローバー』の冷蔵庫に入れ、階段を上がる。


(ん?)


玄関に、見慣れぬ男物の靴があった。


(衛さんは会社のはずだし…)


私は首を傾げた。


(しかし、派手な靴だな…)

こんな靴を履く人が…


(まさか!)


私の中で


『ある人物』の顔が


思い浮かんだ。


…最悪な事に、咲子さんの靴が見当たらない。


と言うことは、今この家にいるのは、双子と『ある人物』と私だけということになる。


(お団子硬くなっちゃうしな…)


仕方なく、私は家の中に入った。


(あぁ、やっぱり…)


空耳でなければ


双子の部屋から、双子の楽しそうな声と


『ある人物』の声が


リビングにいても聞こえてきた。


私は、重い足取りでお茶『三つ』とみたらし団子『三本』が乗ったお盆を持って、階段を上がった。


これが、『双子と私の分』になるなら、それでいいと…


それ『が』いいと思いながら


私は双子の部屋の前に立った。


コンコンッ


ガチャッ


「おかえり」×3


(あぁ、やっぱり)

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