《MUMEI》

私の言葉に、和馬は首を傾げた。


(気付いてないんだ)


和馬の口元には


みたらし団子のタレが付いていた。


「え? 何?」


慌てる和馬に私は笑った。

「ほら、ここ」


私は和馬の口元を親指でなぞってタレを取った。


ペロッ


やっぱり『花月堂』のタレはおいしかった。


「…ねぇ、それ。無意識?」


「はい?」


タレのついた親指を舐めた私を和馬が困ったような、不思議な表情で見つめていた。


(子供扱いされたからかな?)


和馬の顔が赤いような気がした。


「あ〜、俺、帰るわ! 何か、孝太が言ってた意味わかった!」


「何? 急に」


突然大声を出した和馬に私は驚いた。


和馬は双子の部屋に戻り、ジャケットをはおった。


そして、私にハンガーを返しに来たとき


意味不明な発言を残して帰っていった。


和馬が慌ただしく帰った後。


私は、首を傾げながら、呟いた。


「私が『天然魔性』って…どういう意味?」


何となく


咲子さんには訊けない気がして


その夜


昼寝をしたこともあり、私はなかなか寝つけなかった。

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