《MUMEI》 *花瓶*すっかり片付けを終えてしまうと、今度はテーブルを拭きにかかる紫堂。 中央の花瓶を倒さないよう、慎重に。 中には黄色いバラが生けてある。 瑠果が庭から摘んできた花だ。 この屋敷の庭はほぼ花園に近い。 一歩屋敷の外へ出れば、辺りは花で埋め尽くされている。 それを今まで瑠果は独りで保ってきたのだから、紫堂は感心せずにはいられない。 その時。 ゴトッ、と音がして紫堂がその方向に目をやると、花瓶が傾きかけている事に気付き、慌てて水平に戻した。 テーブルを拭きながら知らない内に手がぶつかってしまったらしい。 前へ |次へ |
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