《MUMEI》

「で、話って何なの?」


食前に咲子さんにメールはしておいたが、私は早めに帰りたかった。


「蝶子ちゃん、俺の誕生日覚えてる?」


雅彦の言葉に私は頷き


「五月五日でしょ?」


と答えた。


「蝶子ちゃん、俺は、俺は?」


「今関係あるの?」


私は話しかけてきた俊彦ではなく、雅彦に質問した。

「無いけど…うるさいから、言ってあげて」


(仕方ないなぁ)


子供の日の雅彦と同じくらい、俊彦の誕生日はわかりやすかった。


それは、女の子にとっては一大イベントの日だったから。


「二月十四日でしょ?」


「正解!」


俊彦は椅子から飛び上がって喜んだ。


誕生日がバレンタインなんて、わかりやすすぎて逆に忘れられなかった。


「蝶子ちゃん、俺、元旦ね」


「はぁ」


和馬の誕生日も、わかりやすいなぁと思った。


「孝太は、女の子の日だよな」


「耳の日だ」


和馬の言葉に、孝太が睨みながら訂正した。


どちらも三月三日で正しいが、孝太には『女の子の日』は屈辱のようだった。


「蝶子ちゃんは?」
「蝶子は?」


「私の誕生日は関係無いでしょ?」


「そうだそうだ!」

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