《MUMEI》 「たしかに、大の男が失恋ごときで何大泣きしてんだってくらいアナタ泣いてたけど‥‥それはそれでいーじゃん。純粋って感じで」 やかんの熱湯をそそぐ、ぐるぐる、掻き混ぜる。 「そんだけあやこちゃんのこと好きだったってことじゃん?何も恥ずかしいことないよ」 はい、とベッドに座る俺に差し出されるマグカップ、中で茶色の液体が優しく揺れている。 「無理しないでさ、そゆときは友達にでも頼ればいーんだって。別に俺じゃなくてもいーからさ」 ね?、と傾げる首、ふつう素面では恥ずかしくて言えないマヌケ単語の羅列をあっさり言えるこの茶髪男が怖い。しかしその青臭く安っぽい言葉がどういうわけか今の俺には心地よかった。 ぬるい空気を恥じ入るように口元がむずむずする。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |