《MUMEI》

「たしかに、大の男が失恋ごときで何大泣きしてんだってくらいアナタ泣いてたけど‥‥それはそれでいーじゃん。純粋って感じで」
やかんの熱湯をそそぐ、ぐるぐる、掻き混ぜる。

「そんだけあやこちゃんのこと好きだったってことじゃん?何も恥ずかしいことないよ」

はい、とベッドに座る俺に差し出されるマグカップ、中で茶色の液体が優しく揺れている。

「無理しないでさ、そゆときは友達にでも頼ればいーんだって。別に俺じゃなくてもいーからさ」

ね?、と傾げる首、ふつう素面では恥ずかしくて言えないマヌケ単語の羅列をあっさり言えるこの茶髪男が怖い。しかしその青臭く安っぽい言葉がどういうわけか今の俺には心地よかった。
ぬるい空気を恥じ入るように口元がむずむずする。

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