《MUMEI》

「‥‥恥ずかしいヤツ」

「ここで話の腰を折るか?」

小さく笑いながら言うと、向こうも半笑いで返してきた。
お互いに必死に付かず離れずの距離を保とうとしているのが見え見えだ、ハタチにもなって愛を真面目に語ることも友情を吐露してしまうことも気持ち悪いのだろう。

「まぁ今日はね、大学休みですから」

茶髪男はマグカップを手にしたまま、もう昼過ぎの陽光が差し込む窓のほうへ歩いていった。

「飲みにでも行こうよ、飲んで忘れろ」

窓を開けてこちらを振り替える茶髪男が、少しだけ眩しく見えた。

「いいね、近藤くんの奢り?」

「調子のんなバーカ」

俺の言葉に笑ってツッコミを入れる茶髪男の顔は、いつもの軽薄な顔に戻っていた。
わーお何だこの温い雰囲気。慣れない感覚にこそばゆい気持ちになる。
でも決して不快じゃない。多分。おそらく。

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