《MUMEI》
*気持*
昼食を済ませ一息つくと、瑠果は再び庭へと紫堂を連れ出した。

屋敷の中にいなければ、紫堂に仕事をさせずに済むと分かっていたから。

だからわざと彼を外へと誘い出す。

そして、紫堂はそれに気付いていた。

「お嬢様」

「何だ?」

「どうぞお気遣いなく」

「な‥何を勘違いしているのだ紫堂、私は」

「お嬢様」

紫堂は瑠果の前にかがみ彼女を見上げ、笑いかける。

「お気持ちはとても嬉しいです。──ですがあまり心配なさらないで下さい」

「だが私は‥」

「お嬢様」

「‥?」

「これは僕の命令です」

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