《MUMEI》
有理ノ想イA
「有理さー…もしかして自分の体裁のこと考えてる?元芸能人が歩けなくなったのに野中さんと付き合って、格好がつかないから?」

「ち…っ違うよ!そんなんじゃねぇ」

「じゃあ何?」

「オレと…オレと一緒にいたら絶対、絶対に不便なこととかできないこととかたくさんあるんだよっ。そしたら…早苗に嫌な思いとか、悲しい思いとかいっぱいさせるに決まってる!そういうの嫌なんだよ。オレのせいで――…大切な人が傷付くのは……。大切な人にはいつでも笑っていて欲しいから――…」

有理はじっとうつむき、野中さんは泣いた。

「……なんだ。何にも問題ないじゃん。別れる必要なんてどこにもないよ。よかったね、野中さん」

有理と野中さんはきょとんとした。

すぐに有理が怒りだす。

「お、おいっ流理、お前今まで何聞いてたんだよ!」

「有理こそ何をしゃべってた訳?野中さんは有理が好きで愛してる。有理は野中さんが大切。どこに別れの要素がある?」

「……………」

「有理、逃げちゃダメだよ。野中さんは有理が歩けないことにショックは受けたけど、逃げずにちゃんと受けとめようとしてるよ」

有理は野中さんを見つめた。

野中さんも有理を真摯な瞳で見つめかえす。

「それにさ、恋愛って悲しい思いとか嬉しい思いをしたり、傷付いたりすることを一緒にするから楽しいんだろ?オレが環さんのことで悩んでる時、有理が教えてくれたんだよ」

「流理……」

――ピリリリリリッ

「おおっ仕事のメールだ。じゃあオレ準備して行くから」

「流理」

リビングを出ようとすると、有理がオレを呼びとめた。

「ありがと…な」

「いいって。じゃごゆっくり」

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