《MUMEI》
お月さまと僕
それは必然だった。
しかし、同じに夢でもあった。
目をつむっても消えない光は決してあたたかいようなことはなく、私は身が縮むのを感じた。
私は口にはださなかったが、多少の罪悪は感じていたことを認めよう。
私の心にすむ蝮や北狐はまだ人間であったのだ。

今ここに宣言しよう。

私はもう、
人間ではない。




第1話:お月さまと僕

長女は驚愕した。
居間に入ると厳格な父が天井にはりついていたのだ。
母は机にめり込んでいた。
しかし、セイントの姿はなかった。

長女「父よ」

言いながら長女は、今日学校であったことを思い返していた。
今日はカサハラの電子辞書がなくなったので、クラスみんなで探すことになった。
長女は一生懸命探したが、見つけたのは天童よしみであった。
テニスが上履きと間違えて履いていたのだった。
みなが歓喜する中、長女にはどうしても言いだせないことがあった。

(ではテニスの上履きはどこへ行ったのか…!!!!)

長女は目を見開いた。

長女「父よ、セイントはここにはいないの?」

父「僕はパキスタンに行こうと思う」

そして父は天井にはりついたままパキスタンへ行ってしまった。


次の日、長女は学校にたどり着くことができなかった。
天童よしみが気付いたときは信濃川の激流にのまれてしまっていたのだ。

長女「たすけてーー」
天童よしみ「長女ーー」

天童よしみは、そのときの川の輝きを一生忘れないだろう。
上空を天井のようなものが通りすぎた。


愛と憎しみが交錯し、欲望うず巻く人間界…。
これは大人達に翻弄され、不確かなものばかりを追い求めた少女達の、
ある冬の物語である。


長女が水流にもてあそばれ、小魚達の優しさにふれている間、家では母がミートパイを焼いていた。

母「ミートパイ…ミートパイを焼かなければ…!!」


セイントはどこへ行ったのだろう。

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