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《MUMEI》 学校帰り「あぁあ、なんて憂鬱な日が、また始まっちゃったんだろう…」 夏休みが終わり、学校の始まりだったその日、帰宅途中のトモヤは、ぼんやりと考えながら、足を擦るように歩いていました。 通学路のほとんどを占める川沿いの小道は、まだ、青々とした草に囲われ、ところどころに飛び出したツタや、背の高い草木は、夏休み中に何度も刈られてるとは思えない程、そこかしこに茂っているのでした。 傾き掛けた日を背中に浴び、虚ろな表情で『ズッ、ズッ』と、一人歩くトモヤはまるで、何かに失望して、やる気のない少年のように見えました。 原因は、同級生です。 サトシとトオル… 彼らは、男女30人のクラスの、中心的存在で、みんなに影響力を持っていました。 彼らに逆らうことは、『イジメのターゲットにされる』と、言うことなのです。 トモヤがイジメられるきっかけになったのは、5月の連休が終わってすぐ、仲良しだったケンイチが、2人からイジメられているところを助けようとしてからです。 ケンイチは、2人に命令されて、学校へは持って来てはいけないゲーム機を持って来たのです。 それを使って、サトシが遊んでいる内に、「おもしれぇ、これ、しばらく借りるぜ!」と、言いました。そして、すぐにトオルも、「その後は俺な!」と、付け加えました。 ケンイチは、「えぇ、だめだよぉ、僕、買ってもらったばかりで、まだぜんぜん使ってないんだ!」と言いました。 「いいじゃん、俺達が使ってからで!」サトシが言ったのを聞いて、我慢が出来なくなったトモヤは、「止めろよ、返してやれよ!」と、口をついてしまったのです。 サトシとトオルは、同時にトモヤを見ると、サトシが始めに「へぇ、お前、優しいじゃん!」と、言い、続いてトオルが、「トモヤ、カッコイイ!」と、怒ったような、笑ったような顔で言ったのです。 トモヤは内心(しまった)と、思いましたが、5年生の時に、この学校へ転校してきてから、1番の友達だったケンイチを庇いたかったのです。 その日を境に、クラス中のみんなはもちろん、ケンイチでさえ、トモヤとは目を合わさず、口も訊こうとしませんでした。 サトシとトオルの命令なのは、すぐに分かりましたが、ケンイチまで、従ったことは、トモヤにとっては、かなりのショックでした。 でも、父親の転勤で、転校慣れしていたトモヤにとっては、一人でいる時間は、どうと言うこともなく、同級生と話しをしない日が続くことには、すぐに慣れてしまいました。 ただ、サトシとトオルは、しつこく、例えばトモヤの上履きを隠したり、トモヤの背中に『僕はキモイです』と書いた紙を気付かないように、テープを使って貼ったりするのでした。 今日などは、朝、教室に入ると、トモヤの机だけが反対に向けられていて、無言で直すトモヤをみんながニヤニヤしながら見ていたのです。 ただ、ケンイチだけは、哀しそうに俯いていたのをトモヤは見逃しませんでした。 「まったく、いつ迄こんなことが続くんだろう」 そう思って、足元の小石を川の方に向かって蹴った時、ガサガサガサッ…と、音がしました。 (ん?何かいるのかな?)そう思って、土手の下の音がする方へ近付いて見ることにしました。腿位まで伸びた草むらに、足を踏み入れるのは、少し気味が悪いけど、生き物の気配に対する好奇心が勝って、土手の下り坂を、草を書き分け、川岸に向かい下りて行きました。 |
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