《MUMEI》
*敬意*
「終わりましたよ、お嬢様」

紫堂が瑠果に言った。

瑠果は嬉しそうに微笑む。

彼女が紫堂とゆっくり話を出来るのは、いつもこの時間になってからだった。

瑠果はいつも夕食後のひと時を楽しみにしている。

「紫堂、お前は随分と変わったな」

「そうですか?」

「ああ。──そうだ、普通に話していいぞ」

すると紫堂は少し迷ったが、小声で囁く。

「せやけど、一応へりくだらなアカンのとちゃう?」

「前から思っているのだが──お前はいつもの調子でないと敬語が使えんのか‥?」

「そういう訳やないねんけど──‥まぁ確かに‥こんなん他の人が聞いたら何やろて思われてまうなぁ」

「いや、すまん。お前の好きで構わんのだが‥」

「敬意いう意味ではああいう喋り方がええんとちゃうかなぁ思てんけど──‥」

「私はどちらでも構わん。お前が変わる訳では無いからな」

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