《MUMEI》

(やっぱり、女の子に免疫がないからかな?)


雅彦の初々しい反応を見て、私はつい可愛いなと思ってしまった。


(変なの)


昔と違って、雅彦はかなり逞しく男らしくなったのに。


あんなにファンがいるのに。


そして、私は今度こそ咲子さんに声をかけ、『シューズクラブ』を後にした。


『クローバー』に戻ってすぐに咲子さんが妙な質問をしてきた。


「蝶子ちゃんて、雅君好きなの?」


「何ですか?急に」


「いや、蝶子ちゃん、雅君相手だと結構積極的だから」


「幼馴染みですから」


「恋愛感情は?」


「ありません」


私にとって、雅彦は同い年なのに、弟みたいに可愛い存在だった。


「そっかぁ」


咲子さんは、少し残念そうだった。


(恋愛話好きだもんね)


「期待にそえなくて、すみません」


私は、今は恋愛する気にはなれなかった。


「いいのよ。今夜は忙しくなるから、頑張りましょうね。

ケーキはお願いね」


「はい」


ーその後私達は


大量に押し掛けた雅彦ファン達の対応に追われ

遅い昼食は、ほとんど夕食に近く、私は自宅には上がらず、夜に備えて厨房で仮眠をとっていた。

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