《MUMEI》

しばらくすると、ぱたぱた、と控えめな足音が聞こえてきた。


ドアが少しだけ開き、隙間からひょこっと青年が顔を覗かせる。

うーん、水もしたたる何とやら。



「風呂、ありがとうございました…」

「どういたしまして。寒気とかない?」

「はい、大丈夫です」

「よろしい。…そんなとこにいないでこっちおいで」


手招きすると、怖ず怖ずとバスローブ姿の青年が入ってくる。

ソファに座るよう促しつつ、私はキッチンに向かった。


「何か飲む?あったかいもんの方がいいかしら」

「あ、いや、お構いなく…」

「今更遠慮しないでよ。コーヒー?烏龍茶?それとも酒がいい?」

「……それじゃあ、烏龍茶を」

「了解」


グラスに烏龍茶を入れ、運ぶ。

すると、足元に何か温かいものが触れた。

見ると、青年と一緒に招き入れた子猫が、足にじゃれついている。


「こら、危ないよ」


言いながらゆっくりと足を運ぶ。


「はい、お待ちどうさま」

「ありがとうございます…」


グラスを差し出すと、控えめな態度で受け取り、口をつける。



しっとりと濡れた茶髪が、目の辺りまでかかっている。前髪長いな。

男らしいと言うよりは、美しくて線が細い感じの色男。物腰は柔らかで、いかにも育ちが良さそうだ。



いいとこの坊ちゃんが、何だってあんな所に倒れてたんだろ……

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