《MUMEI》
*夜風*
気を抜けば、本当に眠ってしまいそうになる。

「‥‥っ」

紫堂は慌てて身体を起こすと、ふらつく頭を抱えて窓を開けた。

「‥‥ぁ」

風が吹いている。

少し冷たい。

僅かに身を乗り出すと、頬に当たる風で少しづつ覚醒してくるのが分かる。

(ふぅ、‥危な‥)

「紫堂」

「!?」

紫堂は驚いて扉の方を見る。

「お前──‥まだ起きていたのか」

扉の向こうから、優しい声がした。

「私は大丈夫だ。もう眠ると良い」

「お嬢様──」

「では、私も寝るとしよう」

「──お休みなさい、お嬢様」

「ああ、──お休み」

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